2013年9月22日(日)にlabel X主催で開催された講演会で当事者の「モデルケース」として発表してくださいましたハマカワアツキさんのケースを当日講演会にお越しいただけなかった方のために、改めてホームページでもお伝えさせて頂きます。
自分は男とされる体で生まれて、戸籍には男と記載されています。
しかし、自分には性別がないと思っています。
自己紹介で性自認について話すことがある際は、
「性自認がない無性別のMtXトランスジェンダー」と言っています。
性的指向は、ポリセクシュアルです。
ポリセクシュアルは、3つ以上の性の者へ恋愛感情や性的願望を抱くことです。
自分の恋愛対象になる人は、女の人、MtFの人、ゲイの人です。
実際に付き合いたい人は、ゲイの人です。
今回は、子供頃から今までの自分の性に関することや
今の自分の性について思っていることをお話したいと思います。
小学校に入学する前の5、6歳の頃の自分は、男の体と女の体の違いを理解していませんでした。
だから、その頃の記憶の1つに「妊娠している男の人」というものがあります。
小学生の頃の自分は、どうしても自分のことを僕とも俺とも私とも言えずにいました。だから、僕、俺、私のどれかを何度も無理してでも言おうとしました。しかし、言えませんでした。それで、いつも会話する時には一人称を言わなくても済むように話していました。
今の自分はというと、会話の中で一人称を「私」と言わないといけない場面では「私」と言えるようになりましたが、普段の生活の中では今でも自分のことを僕とも俺とも私ともいうことができません。
今現在の自分の一人称は「自分」です。
自分が中学2年生の時にテレビで放送された「3年B組金八先生」の第6シリーズを見ました。そのドラマの登場人物に女子生徒が着る制服を着ることを嫌い、登校する時だけ足首まで隠れるぐらいの長さのスカートを穿いて、学校に到着したら保健室で黒色のジャージに着替える生徒がいました。この生徒は女とされる体で生まれて、自分のことを男だと思っている人でした。この生徒の話を通して性同一性障害のことを知りました。
中学3年生の時にテレビで放送された「ウィル&グレイス」というアメリカのテレビドラマを見るようになりました。このドラマの登場人物に恋愛対象男の人が好きな男の人がいました。このテレビドラマでゲイという存在を知りました。
アメリカのテレビドラマを通してゲイの存在を知ったことや、家のパソコンがインターネットに繋がったことをきっかけにして、ゲイのことをインターネットで調べ始めるようになりました。
ゲイのことを調べたり、ゲイの人向けのWEBサイトの投稿欄に書き込みをするようになりました。その後、ゲイの人とメル友になったり、実際に会うようになりました。
今から思うとその頃の自分は、自分のことをゲイとは思わず、ゲイの人とメル友になったり、会ったりしていました。
どうして、その頃の自分がゲイの人と会ったりしていたかというと、自分の性自認が男ではないことに気が付いてなく、自分の恋愛対象に男の人が含まれるからです。
自分が21歳で大学4年生の2009年春頃から就職活動で着なければならない男性用のスーツを着ることに違和感ができました。
その違和感は、「どうして男性だと主張していないのに男性にしか思われない服装をして、男だと言ってないのに人から男だと思われないといけないのか」ということでした。違和感が強くなると男性用のスーツを着なくなり、就職活動をやめてしまいました。
違和感が強くなった後、「どうして男性だと主張していないのに男性にしか思われない服装をして、男だと言ってないのに人から男だと思われないとといけないのか」という違和感だけでなく、自分の体が男であることに対しても違和感が出てきました。男の体であることに対する違和感は、男性器に対することや男にしか見えない見た目に対するものでした。
違和感だらけになってからは、自分のセクシュアリティについて話せる友人との電話で「自分の男性器はいらない」とか、「男性器を取ってしまいたい」というようになりました。男性器を取ることで自分の性別に対する違和感を解消しようとしていました。しかし、違和感は全く解消されず、更に違和感が強くなる一方でした。
結局、就職先が決まらないまま、大学を卒業することになりました。
大学卒業後に就職活動を再開しました。男性用のスーツを着ることに対して違和感があるまま就職活動を行ったため、就職先が決まっても、そこで長く働くことができませんでした。
現在は、男性用のスーツを着ないで面接を受けることができた会社でパート社員として働いています。
自分は、性自認がない無性別のMtXトランスジェンダーです。自分には性自認がなく、男ではないと気付き始めた2009年頃はそのことをどうにもできなくて困っていました。「自分は男じゃない」という意識が強かったため、その頃に性同一性障害なのか考えたことがありました。しかし、「あなたは男ではないなら女ですか」と自分に問いかけても「女でもありません」という答えしかありませんでした。それで、自分は「男でも女でもない」と確信しました。
2011年にセクシュアルマイノリティの活動で知り合った方に「トランスジェンダーフェミニズム」という本があることを教えてもらい、読みました。
この本を読んでみたら、「自分もそう思ったことがある」ということがいくつか書かれていました。それから、セクシュアリティに関する会話の時に「自分は男でも女でもない」ということ以外の話もできるようになりました。
今の自分は、自分の性自認が男でも女でもないことを証明できるものがほしいと思っています。それはどうしてかというと、中性・両性・無性・不定性などの男でも女でもない性自認のことを知らない人に自分の性自認について話さないといけない時に「男でないなら女なのですか」と聞かれることがあるからです。その質問に対して「女でもないです」と言うと、その人は何も話ができなくなってしまいます。性自認について話さないといけないので相手の方に「男でも女でもない」ということが伝わってほしいのですが、伝わりません。
それで、「自分の性自認が男でも女手もないことを証明できるもの」があれば、性同一性障害ではないことも証明できて、男でも女手もないことが少しでも伝わるようになるのではないかと思っています。